ロボットハンドやピッキング自動化といった産業用ソフトロボティクスを手がけるこの企業のマーケティング部門は、3名体制で動いていた。新規顧客との接点は年数回の展示会だけ。ウェブサイトはあっても、問い合わせを生む設計にはなっていない。MAもSFAも、コンテンツを置くCMSすら、まだなかった。
着手前のハウスリストは150〜200社。そのほとんどが、展示会で名刺交換した企業だった。
「認知が低い」「体験させにくい」「決裁フローが長い」。産業用ハードウェアの新商材には、この三重苦がある。
商材そのものの良さは疑いようがない。しかし、顧客が「ロボットハンドを探している」という状態にならない限り、接触できない。そして、展示会以外に、その状態の人と出会う仕組みがなかった。
既存のハウスリストはほぼ展示会で名刺交換した企業だ。ナーチャリング施策もなく、一度接触した見込み客へのフォローアップも止まっていた。
この状況が続けば、どうなるか。新規受注の芽は展示会の来場者に限定されたまま。顕在化したタイミングに自社が存在していなければ、競合が取る。受注事例を積み上げるための商談数が、そもそも足りなかった。
最初にこの相談を受けたとき、考えたのは「なぜ展示会以外で出会えないのか」という構造だった。
認知度の低い新商材には、広告を増やすことで解決できない問題がある。「ロボットハンド 導入」と検索する人が少ないなら、リスティング広告の母数は限られる。CPAが跳ね上がり、予算を投下するほど非効率になる。
問題の本質はここにあると判断した。顧客が「自分の現場で困っている問題」を検索しているタイミングを捕まえる受け皿が、どこにもない。
「ピッキング作業を自動化したい」「把持工程の人件費を下げたい」——こういったニーズ起点のキーワードで検索した人が、自社の記事やホワイトペーパーに辿り着く導線がない。顕在化したタイミングに、存在できていないのだ。
だから、広告への再投下を最初の打ち手に選ばなかった。受け皿のない状態で流入を増やしても、問い合わせには転換しない。まず「顕在化タイミングを待ち受ける仕組み」を作ることが先だと判断した。
ボトルネックを3点に整理した。

施策の設計は「環境整備 → 流入獲得 → 育成」という順番で組んだ。逆にすると、受け皿のない状態でリードが来て、転換できないまま終わる。
マーケサイト・CMS・MAの立ち上げを最初に行った。並行して、ホワイトペーパーの骨子を設計。「ロボットハンド導入前に知っておくべきこと」「ピッキング自動化の費用対効果の考え方」など、顧客がニーズを感じ始めた段階で検索するキーワードに合わせたコンテンツを設計した。
受け皿が整った段階で、複数チャネルを並行して立ち上げた。

メルマガを6類型で設計し、獲得リードのフォローアップを仕組み化した。
当社が担ったのは戦略・媒体選定・SEO・ディレクションで、架電やMAの実行はパートナーと連携した。クライアント側には現場情報の提供と意思決定をお願いし、実行の重さを分担した。
支援にあたり、目標値として以下のKPIを設定した。
※ 目安・コンセプトとしての目標値であり、実績値ではありません。
着手後の商談数・CPA・メール開封率の実測値、成果が出るまでの期間、「展示会依存から脱却した」といった定性的な変化については、支援が一定期間進んだ後にあらためて追記します。
比較検討の相手は、SEOに強いコンテンツ制作会社と、展示会代行・テレアポ専門の会社だった。いずれも「チャネルを1つ増やす」提案にとどまり、マーケサイト・CMS・MAが何もない状態から複数チャネルをどう組み合わせるかという全体設計を示す提案はなかった。Ruleは「環境整備→流入獲得→育成」という順番を示し、認知の低い商材特有の事情(検索母数が少ない・検討期間が長い)を踏まえた設計を提示した点が決め手になった。
マーケサイト・CMS・MAの立ち上げという土台作りの段階から伴走してもらえたことで、「何のためにこの順番で動いているか」が3名のマーケティングメンバー間でも共有された状態で進められている。架電やSEOなど実行を担うパートナーとの連携も含めて設計してもらえたため、自社では現場情報の提供と意思決定に集中できている。

この事例から引き出せる原則は一つだ。
認知が低い商材は、出稿で探しに行くより、顕在化タイミングを待ち受ける方が効率がいい。
リスティング広告は「今すぐ探している人」にしかリーチできない。しかし「ピッキング工程を自動化できることを知らない」人は、そもそも検索しない。だから、まず課題を言語化したコンテンツで「気づいていなかったニーズ」を顕在化させ、その流れでサービスに誘導する設計が有効になる。
同じことが、長い検討期間を持つ商材全般に言える。「今すぐ」でない見込み客をどうフォローし続けるか——ナーチャリングの設計が、商談数の差になる。